【シューイチ】人を動かす話し方(ベネフィット応用編)

今回は「人を動かす話し方(ベネフィット応用編)」です。前回に引き続き、ややビジネスよりお話になります。が、今回は恋愛にも、とても通ずる話ですので、ぜひ読んでみてください。

前回話した「ファン化」について

私は「こちらの得となるよう(特に金銭)相手の感情をコントロールすること」を辞めました。細かい話をしだすと(良い商品を手にして欲しいと心から願うとき)商品のベネフィット・デメリット・自分のストーリーを否応なしに話す必要があり、その経緯をファン化と呼ぶこともできるでしょう。

ただ、そのベネフィットの提示を行う動機付けとなる部分に、とても重きを置き、今生きているわけです。なので「自分の利益が最も大事」という概念ともとれる「ファン化」に、興味が沸かないのだろう。そんな風に、前回のシューイチのを書いた後、想いふけっていましたw

自分が幸せだから、他人を幸せにできる?

確かに、これも真理です。でも、幸せの定義は、状況ではなく「気持ち(気分)」であることがほとんどです。「いつもリラックスしており、笑っていられる。不安を最小限に抑えながら、積極的に人と関わり、やりたことに取り組み、日々充実感を感じる」。これが、幸せな気持ち・気分の一例です。

厳密に言うなら、物質が作り出す状況は「幸せな状態」ではありません。大金持ちでも不幸な気持ち・気分をずっと抱えている人は大勢います。「幸せな状況・状態」は、この世に存在せず、あるものはそこから生れれる「幸せな気持ち」なのです。

私達は、よく「幸せになりたい」なんて言ったりしますが、これは「幸せな状態になりたい」のではなく「幸せな気分を味わいたい」のです。気持ち・気分(≒感情)は、自分の脳内から生まれるものであり、物質も確かに影響していますが、突き詰めるところ、この2つは別物なのです。

これは、明らかな事実です。ネットで検索すると、幸福に関してこんな定義が出てきます。

人間は生きていくなかでさまざまな欲求をもち、それが満たされることを願うが、幸福とはそうした欲求が満たされている状態

でも、私は、この概念は採用しないし、誤解を生むと感じています。

確かに、たとえば、戦火に見舞われ、家族が砲弾を浴びて死んでしまった。これは、状況からくる不幸です。では、その逆は?宝くじが当たり、ずっと欲しかった車が買え、家族でドライブに行ったら、とても喜んで貰えた。これも、状況からくる幸福と言えますよね?幸福とは「自力からくる気分」もしくは「他力からくる気分」このどちらかなのです。

そして、私達がコントロールできるもの。それは「自力からくる気分」だけです。

アランことエミール=オーギュスト・シャルティエアラン(哲学者)の幸福論を紹介したプレジデントオンラインの記事タイトルに、こんなものがありました。「笑うからしあわせなのだ」。この言葉は、まさに「自力からくる幸福を選べ」と言わんとしているのかもしれません。

私はこのRISEで、高尚なことを語るつもりはないし、私のコラムやエッセイは、そもそもそんな話をいつもしていませんw。話の流れで、こうなりましたが、ただ一つだけ言えること。それは「自分が幸せだから、他人を幸せにできる」は、正しく言い換えると「自分が幸せな気分だから、他人を幸せな気分にできる」です。

これを採用した方が、コミュニケーションはうまく回るということです。でも「自分が幸せな状態だから、他人を幸せな状態にできる」を採用し続けると、何がいつどうなるかなんてか分からないこのご時世、一生物に頼り、すがって生きていくことになりかねない。外部要因の変化に、いつも一喜一憂することになる。

それこそ、天気にすら、幸せかどうかを決められてしまう。それって、しんどいなと思うわけです。そして、外部要因にすがる生き方に通じる概念。それが、ファン化のように思えてしまい、私の場合、あまり興味を持てない概念となってしまったんです。「相手の好意をコントロールしたい」そんな意図が見え隠れするからです。

それよりも「信じ頼られるには、どうすればいいか?」「応援されるほど、気持ちを重ねて貰うには、どうすればいいか?どんな風に夢を伝えればいいのか?」「面白い時間を一緒に共有するには、どうしたらいい?」「相手に元気になって貰うには?」こういう問いを自分に投げて欲しいなと思う次第です。その方が求めている解が見えてくるでしょうね。きっと。

さて、今日は、同じ相談者さんから頂いていた追加質問に答えていきます。こちらです。

ベネフィットを話さず(信頼され)動いてくれる状態は作れるのか?もし作れるなら、どやってその状態を作るのか?

ベネフィットを話さず、自分のために動いてくれる人が欲しい

もしかしたら、こんな願望から出た質問なのかもしれません。そうだと仮定すると、その答えは、イエスです。数か月・数年と信頼を積み上げていくことで、何も話さずとも、相手が自分のために動いてくれる。そんなことが起こり得ます。たとえば、中学校からずっと付き合いのある友達。入社当初から切磋琢磨してきた同僚。

彼ら彼女らは、それが突然のお願いであっても、おそらく叶えてくれるでしょう。(それが、無理難題でなく、相手の力量範囲なら)人によっては、多少の無理をしてくれる人だっているでしょう。また普段から、あなたが「相手が喜ぶこと」をやっていれば?

当然、相手にも「お返しをしたい」という気持ちが出ますから、俗にいうベネフィットをあげつらわなくても動いてくれますよね。

*こういう話をすると、相手に「お返しをしたい」という気持ちが出なかったら?「やり損になったら?」と心配される方がいます。が、その心配は無用です。あなたが10人にそれをやれば、私の肌感覚として過半数の7人は「お返しをしたい」と言ってくれます。多い時は、10人全員です。恐れずにチャレンジしてみてください。もちろんどうなるかはやってみないと分からないですが、必ず何かに気づけるはずです。ぜひ、自分の言動の結果生じる気持ち・感情、さらには、思考の動きへの感度を高く持って欲しいなと思います。

まあ厳密には「お返しをして気持ちを楽にしたい」「フィフティーフィフティーでいたい」「相手の喜ぶ顔をみたい」「感謝の気持ちを伝えて、2人の仲をもっと深めたい」などのベネフィットがあるわけですが。それは、相手の中に自然発生したものであり、こちらが何かを発言したわけではありません。

また、今回の相談者さんは、おそらくビジネスをされているのだと思います。で、何回かセールスをするうちに「これを得ることで、なんちゃらかんちゃら…」とベネフィットを解説しなくても、相手が動いてくれたらなぁ。自分の薦める商品を買ってくれたらなぁ。と思ったのかもしれません。

私もそれを夢見たことがありますし、実際にそれが可能と謳うマーケターも多いです。では、もう一度最初の質問に戻りましょう。

「ベネフィットを伝える。これをはしょり、購入して貰うことはできるのか?」

答えは、イエスです。ただ、これはね、ごく一部の人に限りますし、この状態を短時間で作れる関係は、師弟関係、依存関係、大きな権威をどちらかが持っている、主導権が極端に片側に寄っているなど、奇妙とも取れる関係が成り立ったときであることが、とてもとても多いのです。

だから、何も言わなくてもお客さんが自分の決断で「あなたが売ってるものは、だいたい買いますよ」という状態は、自然にできあがるものであり、依存関係や主導権の偏りなどを意図的に作り出すべきではないと感じています。個人や小規模で事業をやっているのなら、なおのこと。依存させる=クレーマーを多く生む元凶ともなりかねませんし、依存させる=何も自力で決断できず、大成しにくい体質を作り出すからです。

目先のお金は生めても、そこからの発展は、限られているように感じます。ようするに、ベネフィットに関しては「はしょる」ことは、お勧めしません。なぜんばら、以下2つの事実があるからです。

  • 人は、ベネフィットの羅列に強烈に反応する
  • 人は、偏ったベネフィットしか見えない

だから、常にベネフィットを語ることで、常に新しい顧客となるであろう人々の興味を引き続けられ、購買を検討してもらう。このトリガーを引けるのです。恋愛に置き換えるなら、常にベネフィットを伝えることで、いい関係が築けるのです。

ベネフィットを伝えることは、イコール「同じ方向を向いていると意思疎通するための意思確認作業だ」と感じるほどです。1つずつ解説しましょう。

人は、ベネフィットの羅列に強烈に反応する

たとえば、あなたが恋人を作る理由をひとつだけ、あげてみましょう。そうですね、何が良いかな。

(同棲したら)毎日一緒に晩ご飯を食べ、ホッとできる時間を毎晩味わえる

は、どうでしょう?孤独な食事の時間が、癒される時間に変わります。パートナーが食事を作って待っていてくれるかもだし、食器洗いを手伝ってくれるかも。一緒にスーパーに買い物に行ったり「帰りに、牛乳買ってきて」なんて、夫婦みたいな会話を楽しめるかもです。

では、上記以外の残り9個をあげてみましょう。

  • (同棲したら)毎日一緒に晩ご飯を食べ、ホッとできる時間を毎晩味わえる
  • 仕事でドロドロに疲れても、パートナーの笑顔を見ると、明日も頑張れる
  • 友達に「素敵なカップルだね」と褒められる
  • Xmasのプレゼント交換ができ、手を繋いでイルミネーションを見に行ける
  • おはよう・おやすみとLINEで繋がり「もう、ひとりじゃないだ」と実感できる
  • 落ち込んだとき、優しく膝枕してくれ、爪を切ってくれる
  • 誕生日を一緒に祝ってくれる。ろうそくに火をつけてくれる
  • 相手の喜ぶ顔を見るのが嬉しくて、優しいことをいっぱいしたくなる
  • 一緒にお風呂に入り、背中を流して貰える
  • ベッドで重なったスプーンのようにぴったりくっついて眠れる
  • 恋人は?と聞かれた時、引け目を感じず、堂々と「いるよ」と返事ができる
  • 「大好きだよ・ずっと一緒にいたい・ずっと一緒にいようね」と言い合える人ができる
  • 自分の仕事を全力で応援してくれる人ができる
  • 短所も含め、自分を理解してくれ「そこも含めて好きなんだよ」と言ってくれる人ができる

あげるときりがないほど、恋人を作るベネフィットは出てきます。さて、ここで、あなたに質問です。1つだけベネフィットをあげられたときと、10個以上あげられたとき、どちらが「恋人が欲しいな」と思いました?きっと、多くの人が後者でしょう。この心が動く現象は、コミュニケーションでも同じだし、恋愛でも同じです。

相手に動いてほしいと思うとき、自分の意見や主張の魅力を余すところなく伝えたいとき。ベネフィットの量は多いに越したことはないのです。なぜなら、人は偏ったベネフィットしか見えないからです。

人は、偏ったベネフィットしか見えない

これは、生きてきた経緯・価値観が深く関係しているため、仕方ないし、人とはそういうものです。私が思いつかないベネフィットをあなたが思いつく事だって当然あるわけで。

ベネフィットを自ら見つけ出し、勝手に行動してくれる。この状態は、そもそも「あなたの存在自体」にベネフィットを感じているときだけです。そこまで親しい関係、そこまで確固たる信頼関係を築くのには、それなりの時間がかかるものであり、ここを端折るという発想自体が関係を悪化させる元凶になっていることが、本当に多い。

ただ、この一般的に時間がかかると言われる信頼構築をショートカットする方法があります。それが、権威や第三者の声、エビデンス(いわゆる証拠)の提示です。まあ、これらが暗にベネフィットを明示しているだけなのですがw。

言葉で言われるよりも、それ以外のなにかで伝えれた方が、心が動くときもあるものです。毎回、口で「好きだ。好きだ」と言ってるだけ。行動が伴っていない人が、どれだけ巧みにベネフィットをあげつらっても「いやいや、どうせまた口だけでしょ?」となりますからね。そもそも、相手の言葉よりも行動に重きを置く人だっているでしょうしね。

だから、必ずベネフィットを言わなければならないとは思いません。ただ人は、この2つの性質を持っている。

  • 人は、ベネフィットの羅列に強烈に反応する
  • 人は、偏ったベネフィットしか見えない

そのため、安易に面倒だからとベネフィットをはしょると(=意思疎通を怠る)、まったく反応が取れないことだって、当然よくあるわけです。これ、恋愛で言うなら「言わなくてもわかるでしょ?」ってやつですw。

だから、私は基本的にベネフィットをはしょる行為をあまり推奨しません。ベネフィットが言えない・出てこない状態とは、イコール相手の気持ちが分かっていないときでもありますからね。相手の望む未来、望む感情が見えないってことですから。そりゃあなた、そんな状態で、こちらの主張・要望を受け入れて欲しいなんて無謀ですよね。

次回は「人の本質を読み解く方法」を掘り下げていきますね。ではまた次回。

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